「不変の美」が集うインテリアの館

COMPLEX UNIVERSAL FURNITURE SUPPLY

November 16, 2022 Text Junko Chiba

長きにわたって愛されてきたアンティーク家具には、時代を超えて変わらぬ美しさがある。一方で新品の中にも「不変の美」を内包するものがある。

る「SUBWAY CERAMICS」のタイルで しつらえたキッチン
現在も実際にNYの地下鉄で使用されている「SUBWAY CERAMICS」のタイルでしつらえたキッチン。

目黒から三田に抜ける通りを行くと、やがて左手に古いビルが現れる。ふとそこで足が止まるのは、大きなガラス窓越しに広がる異空間に目が吸い寄せられるからだろう。ここコンプレックス ユニバーサル ファニチャー サプライに展示されている個性的で魅力的な家具・インテリアは、そのくらい強烈な〝美光線〞を放っているのだ。
 
扉を開けるとまず、ぶくぶくと泡立つ水の玉のような、むくむく湧き上がる雲のような、ユニークな照明器具に出迎えられた。ぬくもりのある光の輪が乱反射する様は、これまで見たことのない美しさだ。「アパラタスというアメリカの照明ブランドの作品で、その名も『クラウド』。19世紀のフロストガラスのような風合いを出すため、ガラス球に手作業でフロスト加工を施しています。とても人気がありますね」

代表取締役・木村ユタカ氏は笑みを浮かべて〝解説〞しつつ、「日本でこのアパラタスを扱っているのはうちだけです」と一言添える。
 
この「うちだけ」というのは本ショップを知る重要なキーワード。独自の流通ルートを持っていることにほかならないからだ。言葉通り、木村氏が自らアメリカやイタリアに赴き、自分の目で見て直接買い付けたスーパーブランドが、豊富にそろう。

「私は26歳くらいまで、アンティーク家具の修理工だったんです。その過程で家具の構造を学び、いつの間にか図面が書けるようになりました。それで友人の家具デザイナーとともに家具屋をやり、気がついたらレストランやホテルから特注家具の注文が来て、大型案件を引き受けるようになっていた、という感じですね」

  • 「Le Sfere」 「Le Sfere」
    イタリア語で「球体」を意味する「Le Sfere」シリーズ。デザインを手がけたジノ・サルファッティは革新的なアイデアと画期的なデザインを組み合わせた20世紀の照明を世に送り出した。トリノのレージョ劇場では、このシャンデリアをさまざまな構成で見ることができる。
  • 「クラウド」シリーズ 「クラウド」シリーズ
    アパラタスの「クラウド」シリーズ。ビンテージの照明から着想。
  • セザンアームチェア セザンアームチェア
    イタリア・タッキーニのセザンアームチェア。
  • 「Le Sfere」
  • 「クラウド」シリーズ
  • セザンアームチェア

飄々(ひょうひょう)とした物言いにも、「家具愛」がにじむ。しかも反骨精神あふれる氏は、流行にとらわれず、時代を超えて愛される本物の良さを見抜く目を磨いてきた。2007年に設立した本ショップの名にはそんな氏の「世界中から厳選した家具(universal furniture)を複合(complex)し供給(supply)していきたい」という思いが込められている。
 
とりわけ照明器具が個性的。前出のアパラタスに加えて、イタリアのブランド、アステップの「Le Sfere」シリーズがすばらしい。イタリアの老舗照明機器メーカー、アルテルーチェ社の創業者にしてデザイナーのジノ・サルファッティが、月から発した光に魅了され、デザインしたものだ。同シリーズは「モデル237」の一球から始まり、象徴的な24球のシャンデリアへと拡張。のちに、アステップブランドを立ち上げた孫のアレッサンドロが復刻したものだ。その姿はシンプルでありながらエレガント。空間に応じて、多彩な魅力を発揮する。
 
もちろん照明のみならず、テーブルやソファ、椅子をはじめとする家具から、テーブルウェア、プランター、さらにNYの地下鉄に使われているサブウェイタイルまで、あらゆるジャンルの〝本物〞がそろう。
 
いざショップへ。家具を知り抜いた木村氏との〝インテリア談議〞が楽しくないはずはない。

●コンプレックス 
TEL 03-3760-0111 www.complex-jp.net

新着記事

おすすめ記事

ラグジュアリーとは何か?

ラグジュアリーとは何か?

それを問い直すことが、今、時代と向き合うことと同義語になってきました。今、地球規模での価値観の変容が進んでいます。
サステナブル、SDGs、ESG……これらのタームが、生活の中に自然と溶け込みつつあります。持続可能な社会への意識を高めることが、個人にも、社会全体にも求められ、既に多くのブランドや企業が、こうしたスタンスを取り始めています。「NILE’S CODE DIGITAL」では、先進的な意識を持ったブランドや読者と価値観をシェアしながら、今という時代におけるラグジュアリーを捉え直し、再提示したいと考えています。