
135年にわたり途切れることなく歴史を刻んできた名門、エベラール。創業者ジョルジュ・ルシアン・エベラールは、1887年に弱冠22歳で自身の工房を設立後、クロノグラフ懐中時計を完成させ、1919年にはワンプッシュ・クロノグラフ腕時計を開発。以降、35年にはスタート/ストップボタンを独立させたダブルプッシャー・クロノグラフ、38年には12時間積算計を備えたクロノグラフ、39年にはスプリットセコンド・クロノグラフ……と世界初となる機能のクロノグラフを相次いで開発し、評価を決定づけていく。
40年代に入ると、イタリア海軍が将校用のオフィサーズウォッチとしてエベラールのクロノグラフを採用。42年には、伊空軍の特殊任務フライトにも同社の懐中時計が採用されている。こうした軍での信頼感に加え、92年には優勝回数70回を誇り、イタリアの国民的英雄と呼ばれたレーシングドライバー、タツィオ・ヌヴォラーリの名を冠したクロノグラフを発表し、人気を広げる。

元フィアットグループの総帥で、希代のファッショニスタとして、今なおリスペクトを集めるジャンニ・アニエッリも、エベラールの愛用者だったことが知られている。またモトGPのチャンピオン、ロリス・カピロッシ、2006年のW杯を制したイタリア代表のMFジェンナーロ・ガットゥーゾら、イタリアの国民的スターがこぞってエベラールを選んだ。
そんなエベラールが21年、日本への本格上陸を果たした。長い歴史の中で培われた名機のDNAを受け継ぐ充実のラインアップの中から、“顔”というべき3モデルを紹介したい。

(左)12時位置に30分積算計、6時位置に12時間積算計を置いたヴァーティカルデザインで、センターにスパイラル状のタキメーター、9時位置にはタツィオ・ヌヴォラーリの頭文字を組み合わせたロゴを配した。「タツィオ・ヌヴォラーリ・レジェンド・ブラウンヘルメット」自動巻き、ケース径43㎜、SSケース×ビンテージ調レザーストラップ、3気圧防水、972,400円。
まず「クロノ4 21-42」。01年、時計史上初めて四つのカウンターを横一列に並べた、特許取得のクロノグラフ「クロノ4」を発表。クロノグラフのスペシャリストとしての貫禄を示した。そのデビュー20周年に当たる21年に、従来の直径40㎜から42㎜にスケールアップして登場。スポーティーなダイナミックさの中に上品な雰囲気も漂う。
「エクストラ・フォルト」は、1940年代デビュー当時の面影を感じさせるコレクション。“超強きょう靭じ ん”を意味するネーミングは、耐衝撃機構や、裏蓋を二重にしたケース構造などを採用し、強度を高めたことに由来する。それでいてスポーティーかつエレガントな雰囲気は、「エクストラ・フォルト・グラン・タイユ・ルー・ア・コロンヌ」にも継承されている。
「タツィオ ヌヴォラーリ・レジェンド・ブラウンヘルメット」は、伝説のドライバーを讃えるモデル。ローターにはタツィオ・ヌヴォラーリが駆ったアルファ・ロメオを刻印し、ヴィンテージ加工のレザーストラップも、モータースポーツテイストにあふれている。
生粋のスイスブランドとしてのクラシックな伝統や確かな技術力の一方、イタリアの趣味性やパッションを浸透・醸成させ、他のスイスブランドとは一線を画す存在となってきたエベラール。今、選ぶ人の審美眼をこれほど雄弁に物語るウォッチブランドはないだろう。
●エベラール・ジャパン TEL03-5422-8087 www.eberhard.jp