光発電によって駆動するシチズン独自の技術「エコ・ドライブ」。定期的な電池交換の手間から解放し、発電効率や精度などの機能価値の向上のみならず、光を透過させるさまざまな素材や意匠を試み、審美性にもこだわってきた。そうした流れを受け、2017年に初めて土佐和紙を文字板に採用したモデルを発表。光を透過させる「エコ・ドライブ」との親性と味わい深い表情とを両立させ、高い評価を得る。
以降、色彩豊かな和紙文字板や、金箔、プラチナ箔を蒔ま いた和紙文字板のモデルなどを発表し進化を重ねてきた。そして和紙文字板の登場から5年を迎えるに当たり、新たなチャレンジとして、世界で最も薄いと言われる「土佐典具帖紙(てんぐじょうし)」を天然の阿波藍で手染めした文字板の試みが進められた。
古くから日本人の生活に根付いてきた藍染は、“ジャパンブルー”と呼ばれ、海外でも親しまれている。布、衣類、革製品など、近年その魅力の幅を広げているが、文字板に採用した腕時計は、おそらく世界でも初。それだけに耐久性や仕上がりの際のムラなど、さまざまなハードルを手探りで解決する必要があった。
新たな試みのパートナーは、ワタナベズという藍染工房だった。代表で藍師・染師の渡邉健太氏は、1986年山形県に生まれ、東京で勤務していたある時、藍染体験を通じて魅せられ、藍染で有名な徳島への移住を決意、伝統的な藍染に従事し始める。蓼藍(たであい)の栽培の土壌造りに始まり、染料の元となる蒅(すくも)作り、蒅に木灰汁などを加え、さらに発酵させ染料を作る〝藍建て〞、染色・製作に至るまで、全てを一貫して手掛ける。一つひとつの部品から時計の全てを自社内で一貫製造することができるシチズンのマニュファクチュールとしてのスタンスとも通底することに加え、ともに新しい試みに積極的なことからコラボレーションが実現した。
渡邉氏からの提案で、和紙の強度を上げるために、こんにゃくのりを塗布してから染色を実施。また光の透過性を確保しながら、藍染らしい色調に仕上げるために試作を繰り返し、デザイナーともディスカッションしながら、ターゲットとなる色味を決め、各工程が進められた。
こうして自然由来のものだけを用いた〝天然灰汁発酵建て〞という伝統技法で染め重ねられた藍染文字板は、冴えた色合いと深みが実に味わい深い。一つとして同じものがなく、工芸品ならではの魅力にも富む。
加えて、この藍染和紙文字板には、もう一つ重要なメッセージも込められている。藍染の染め上がりを左右する染液の中の発酵菌は、役目を終えると畑の土に返され、それが肥やしとなり、次にまた上質な蓼藍を育むという。自然なサイクルに基づき、長きにわたり色調を維持する藍染は、「エコ・ドライブ」を軸にシチズンが取り組むサステナブルなあり方とも響き合ったのだ。伝統性、次なる理想の創出、唯一無二であること、そして持続可能性。託されたメッセージが、この2モデルの他にない魅力を際立たせている。
※アナログ式光発電腕時計(自律型)として。2022年10月現在、シチズン時計調べ。
●シチズン時計お客様時計相談室
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藍染和紙にメッセージを託して
ザ・シチズン
藍染和紙を文字板に採用した「ザ・シチズン」の新作2モデル、「AQ6110-10L」と「AQ4091-56M」が登場した。和の匠の技と最先端テクノロジーとの融合のみならず、サステナブルなメッセージをも持ったモデルの魅力を解き明かす。