ボジョレーワインの基礎知識

December 8, 2022 Text Yasushi Matsuami
December 9, 2022 Last modified
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ボジョレーでは、伝統的にガメイ種のブドウを手摘みする。機械によらない伝統的な手法が、ボジョレーワインの優しい味わいを生む。
ⓒVins du Beaujolais / Etienne Ramousse

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ボジョレー地区とは、フランス東南部、ブルゴーニュの南端からリヨンの北まで、約55㎞にわたる丘陵地帯を指す。栽培されているブドウは、ガメイ種が大半で、これを用いたワインがボジョレーワインである。ボジョレー・ヌーボーは、ご存じの通り、その年に収穫されたブドウを使った新酒のことをいう。

6月に開花したブドウの花は、下旬にかけて徐々に実をつけ、7月には成長し色づき、8月には収穫の時を迎える。フランスの赤ワインの多くは、収穫したブドウの実を潰して果汁を取り、タンク内で発酵させるのだが、ボジョレーでは、破砕せず房のままタンク内に入れ、ブドウ自体の重みで自然に潰れて出てくる果汁を発酵させる。

この際、タンク内に発生する炭酸ガスを利用して発酵させる方法と、炭酸ガスを追加で充填する方法とがあるが、ジョルジュ デュブッフ社などは、伝統的な前者の方法を採る。これはマセラシオン・カルボニックという発酵方法で、このためには収穫の際、機械摘みではなく、手摘みする必要がある。意外と手のかかるプロセスが必要なのだ。

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ボジョレーでは、ぶどうを破砕せず房のままタンク内に入れ、ブドウ自体の重みで自然に潰れて出てくる果汁を発酵させるマセラシオン・カルボニックという醸造方法を採る。短期間で色と風味をつけることができる。
ⓒVins du Beaujolais / Etienne Ramousse

通常1週間の発酵期間を5日に短縮し、摘果からわずか3週間で瓶詰めされたヌーボーは、軽快でフレッシュな果実のような味わいが特徴。ベリー系の甘酸っぱさやバナナのような風味、また花のような香りを感じさせ、意外な複雑性も持っている。

ヌーボーばかりが注目されがちだが、通年品のボジョレーワイン、より高品質なガメイ種から造られるボジョレー・ヴィラージュ、さらに村名を名乗ることを許されたクオリティーの高い10のクリュ ボジョレーもある。

マップ
写真提供:サントリー

通常のボジョレーを名乗るワインは、ボジョレー地区の主に南側で生産される。ボジョレー・ヴィラージュは、それよりも北側の花か 崗こう岩がんを主体とするエリアで生産され、さらにその中央部の、よりガメイ種に適した土壌を有する10村、いわくムーラン・ナ・ヴァン、フルーリー、サンタムール、モルゴン、ブルーイィなどなどがクリュボジョレーの産地となっている。後者ほど、ガメイ種由来の華やかさの中に、豊かなボディーを感じさせる仕上がりとなる。このうち、ムーラン・ナ・ヴァンは、ボジョレーで唯一、木樽たるで発酵させたワインを用いており、長期熟成にも向いている。

写真・取材協:ボジョレーワイン委員会

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