一貫した品質主義 – ボジョレーヌーボー

エノテカ

December 14, 2022 Photo Masahiro Goda Text Izumi Shibata
December 12, 2022 Last modified

ワインの輸入からワインショップ、通販、卸、国際事業までを手掛けるエノテカ。同社が扱うボジョレー・ヌーボーの特徴と背景を常務執行役員の改野晃一さんにうかがった。

ボジョレー・ヌーボー解禁!」「ボジョレーワインの基礎知識」から続く

改野晃一さん
改野晃一 かいの・こういち
1970年、大阪市生まれ。2009年、エノテカ入社。現在、同社常務執行役員、商品部長兼広報室長。日本ソムリエ協会認定ワインアドバイザー。WSET Level3 Award in Wines、WSET Level 3Award in Sake。

日本にボジョレー・ヌーボーが輸入されるようになったのは1970年代。その後バブル経済が始まり、ワインブームが勃興。とりわけ「11月の第3木曜日に解禁」という特別感の強いボジョレー・ヌーボーは熱狂的に受け入れられるようになった。「日本は日付変更線の関係から、フランス本国より8時間も早く飲むことができます。『世界一早く飲める』というインパクトが、初もの好きな日本人の気性をあおったのでしょうね」と、改野さんは話す。ちなみにエノテカは設立当初、ボジョレー・ヌーボーを取り扱う予定はなかったという。「でもお客様からの強い要望に応える形で、数年後には輸入を開始。多くの方々に喜んでいただきました」
 
そんなボジョレー・ヌーボーの熱狂も、バブルの終焉とともに下火に。一時期は低迷したが、2003年に復活する。「この年のフランスは、歴史的な猛暑だったのです。前評判で『100年に一度のクオリティー』と質の高さが強調され、多くの方々の注目を呼び覚ますことになりました」。その結果、ボジョレー・ヌーボーは再度空前の盛り上がりを見せることに。しかも、日本でのワイン文化の成熟につれ、「お客様は徐々に品質や味わいを重視するようになっていきました」という。そして今や、季節の風物詩として、しっかりと根付いている。
 
さて、日本でこうした紆余曲折を経てきたボジョレー・ヌーボーだが、エノテカでは一貫した哲学で向き合ってきた。「輸入を始めた時から、量を売るより、品質のよいものを確実にお届けしています」と改野さん。その象徴が、パリの名門中の名門老舗レストラン「タイユヴァン」の目利きによるボジョレー・ヌーボーを輸入開始当初から扱っていること。このレストランは1973年から30年以上にもわたり三つ星を守り続けてきた、名実ともにフランス最高峰のレストランで、料理はもちろんワインのセレクトでも尊敬を集めている。「こちらのワインリストに載ることは、生産者にとって最高の栄誉。ワイン専門家や愛好家たちの指標にもなっています」というほどだ。
 
この「タイユヴァン」のソムリエが生産者たちの蔵元に直接出向き、試飲をして、優れた樽のワインだけを買い付け、瓶詰めされたものが、エノテカのボジョレー・ヌーボーの主力。「かつてのいわゆる『初心者向け』というイメージではありません。クオリティーと味わいでワイン愛好家や美食家の方々に満足いただけるものです」。実際今年もエノテカの通販では、タイユヴァンシリーズの1万円を超えるトップキュヴェが予約段階から売り切れている。エノテカのボジョレー・ヌーボーが、何よりも品質面でお客から信頼を得ている証しだ。

「今年のボジョレー地区は8月の気温が高く降水量も例年に比べて少なかったそうです。つまり乾燥して日照に恵まれていたため、高い品質のブドウが生まれたと聞きます。ボジョレー・ヌーボーの品質も大いに期待できます」と改野さん。「ぜひ年末に向けての華やかなシーズンに楽しんでいただきたいですね」と語る。

●ワインショップ・エノテカ 広尾本店
東京都港区南麻布5-14-15 TEL03-3280-3634 www.enoteca.co.jp

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