
「鳥取和牛の明日を担う4人衆鳥 前編」はこちら
良い肉の牛を育てる肥育牛舎
うしぶせファーム:赤身の香り高い味わいを重視
次に訪問したのは東部、いかり原牧場。この一角に立つ4棟の牛舎の一つで、うしぶせファーム2代目の岸本真広さんが肥育を手がけている。和牛の生産地として名高い智頭(ちづ)町にある実家の牧場で生まれた子牛と、セリで買った子牛が100頭ほど、清潔で快適な環境でのんびり暮らす。
「今、雌牛を増やしています。雄牛ほど肉量は取れないんですが、雌は肉のきめが細かく、優しいけれどしっかりした味わい。赤身にもう少し味をつけたいと、餌を工夫しています。サシが程よく入り、脂はさっぱりしていて、噛んだ後に赤身の甘さやいい香りが口中に広がる感じですね」
需要の落ち込みや餌代の高騰など、厳しい状況が続く中、岸本さんは「今一度おいしさを見つめ直し、よりうまい肉をつくる」べく奮闘中だ。
一貫生産に取り組む牛舎
鳥飼畜産:一貫生産体制だからこその肉質
最後に中部、鳥飼畜産を訪ねた。ここは繁殖と肥育の両方を行う一貫生産の牛舎だ。
40年以上前に開いたこの牧場で現在経営を担うのは、2代目の鳥飼雄太郎さん。「生まれた時からずっと面倒を見るので、体調や状態の変化にすぐに気づいてあげられます。また牛にとっても、移動のストレスなく、ずっと同じ環境で暮らせるのはいいですよね」と一貫生産のメリットを強調する。
現実には「あまり成績の伴わない時代もあった」そうだが、雄太郎さんはいろんな人のアドバイスに耳を傾け、試験場からいい凍結精子を購入したり、餌を変えたり、試行錯誤を重ねて今の形に落ち着いたという。
牛の肉質は、6割が遺伝で決まるとか。だからゲノム解析が重要なのだ。
「大きかったのは、繁殖の母牛に、オレイン酸の含有量の高い脂肪を持つ牛がそろったこと。県が『鳥取和牛オレイン55』の認定基準を決める以前から、うちのコたちの脂肪は最高でしたよ」
また2014年には、次兄の賢吾さんが牛肉の流通を変えたいとの思いで、マスコミから転身。鳥飼畜産を指定農場とする「あかまる牛肉店」をオープンした。飲食店への提供のほか、店頭販売と店内で食事が楽しめる店として、現在は2店舗を運営。販売者として、鳥取和牛のブランド力強化に力を尽くしている。
鳥取和牛は生産量が少なく、知名度はまだ高くない。しかし「おいしい牛肉の代名詞的存在」になるポテンシャルを秘めている。つくり手・4人衆の情熱が、その日の来ることを約束していると感じた。