
あでやかな重厚感、複雑で奥深い香り、甘みのなかに苦みを感じる独特の味わい……。イタリアの赤ワイン、アマローネは、葡萄を陰干しして発酵させる伝統的手法で造る希少な最高級ワインだ。長い歴史のなかでいくつかのカンティーナがオリジナリティーの高いアマローネを生み出してきたが、そのなかで決して流行に左右されず古来のスタイルを守り続けているカンティーナがある。同国の北東部、ヴェネト州ヴェローナを拠点とするベルターニだ。
同社を創業したのはジョヴァン・バッティスタとガエターノのベルターニ兄弟。二人は1850年から約7年間フランスに亡命し、当時最先端のワイン造りを学んだ。その後、故郷であるヴェローナに戻った二人は間もなく自分たちでワイン造りを開始し、1857年にベルターニを創業。1860年にリリースした「セッコ・ベルターニ」が当時画期的な辛口赤ワインとして注目を集め、品質の高いイタリアワインの代表として地位を確立した。

ベルターニは創業後早い段階で地区ごとに異なる特徴を持つヴェローナの土地に着目し、葡萄畑を開墾してきた。現在では四つの地区に自社畑を持ち、土地の個性にこだわりながらすべてのワインに自社の葡萄を使用。2012年からは醸造責任者にワイナリーのマネジメント経験が豊富なアンドレア・ロナルディ氏を迎え、伝統を生かした唯一無二のワイン造りを展開している。

そんなベルターニのこだわりが最も感じられるのが「アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラ・クラッシコ」。惜しむことなく手間ひまをかけたその手法には脱帽させられる。まずはヴァルポリチェッラ・クラッシコ地区のノーヴァレ農園で栽培された2品種の葡萄を、良質な果実のみ厳選して収穫。傷がついていると陰干し中の腐敗の原因になるため、細心の注意が必要だ。収穫した葡萄は竹製すのこの上に並べ、約4カ月もの間、屋根裏部屋で陰干しする。除湿器は使わず窓の開閉と扇風機のみで湿度を調整し、毎日不良果実を取り除く作業を重ねることで、自然な陰干しでしか得られない香りや味わいを引き出しているのだ。乾燥した葡萄は重量が減り一本のために通常の赤ワインの3倍の量を要するというから、それだけでアマローネの価値を強く感じる。

陰干し後、葡萄はさらに選別され、ガラスコーティングされたセメントタンク内で40日以上かけて発酵。オーク大樽に移し、規定が2年のところ6年もの期間をかけて熟成させる。さらに1年以上の瓶内熟成を経て、ついにリリース。収穫から数えて約3000日もの歳月を要するが、この手法でこそ同社ならではの上品で繊細な味わいのアマローネが生み出される。また、長期熟成能力の高さも魅力の一つ。手間を惜しまず造られているからこそ、古いヴィンテージでも澱がほとんどなく、最後の一滴まで飲むことができるという。
ほかでは決して味わえないアマローネを、一度は口にしたいものだ。
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※『Nile’s NILE』2021年8月号に掲載した記事をWEB用に編集し掲載しています